このたび日光国立公園指定90年を記念し、「大いなる山々」展を開催いたします。
　「山」は私たち人間にとって生命の源であり、聖なるものが宿るとされる大きな存在です。とりわけ日本では、私たちの生活に恩恵を与えるだけでなく、古代から信仰の対象として崇められてきました。近代以降は登山活動の広がりとともに風景美の対象とされ、人々を魅了し続けてきました。
　ここ日光も奈良時代から山岳信仰の地として栄え、現在も山々を中心に自然と歴史文化が融合した観光地として知られています。1934（昭和９）年には、世界に誇る日本の景勝地として国立公園に指定されました。
　当館は、国立公園内に位置する数少ない公立美術館であり、日光が国立公園の歴史と深い関わりをもっていた由縁から、「国立公園絵画コレクション」を所蔵しています。このコレクションは、昭和初期、国立公園の普及のために当時を代表する洋画家たちによって描かれた作品群を核とするもので、中でも「山」を主題としている作品が多く見受けられます。
　そこで本展では、国立公園絵画コレクションを中心に、近現代の画家による「山」をテーマとした作品を展示します。画家たちの山へのまなざしと表現を通して、山の魅力を再発見する、さらには自然と人とのつながりを見つめ直す機会となりましたら幸いです。