小杉放菴記念日光美術館では、主たるコレクションとして、明治・大正・昭和にかけて幅広い分野で活躍し、日本の近代美術史上に特異な存在感を示した日光出身の画家・小杉放菴の素描画、油彩画、日本画、水彩画、書などの作品と、書簡や書籍、遺愛品など、関係する資料を所蔵しています。

　油彩画は、東京大学安田講堂の壁画制作の準備のために描かれ、現在、当館のシンボル的な存在となっている《泉》をはじめとした未醒時代の作品を中心に、晩年の日本画的な表現の作品まで。
　日本画では、いまだに洋画の影響を色濃く残した大正時代の作品や、雅号を放庵（放菴）と改めてからの巧妙な筆致を生かした作品。もちろん、その中には、特別に漉かせた「放菴紙」と称される越前の麻紙に花鳥や道釈人物を描いた、素描画とも密接な関係のある、放菴の典型的な作品もふくまれており、初期から晩年にいたる画風の変遷を辿ることができます。

　以上のような作品を順次、展覧会で御紹介しながら、小杉放菴記念日光美術館では、多彩な才能を示す画人・小杉放菴の全貌に迫るため、質・量ともに充実したコレクションの形成に努めています。
　今回の展覧会では、昨年度、新たに購入した作品を含め、設立準備段階から20年以上にわたって収集を続けてきた所蔵作品や寄託作品を合わせて御紹介いたします。