昨年、没後50年を迎えた小杉放菴は、油彩画、水彩画、日本画、素描画といった、さまざまな作品をのこし、日本の近代美術史上に特異な存在感を示しました。

　小杉放菴記念日光美術館では、東京大学・安田講堂の壁画制作の準備のために描かれた《泉》をはじめとする、「未醒」時代を中心とした油彩画と、いまだに、洋画の影響を色濃くのこす大正時代の日本画から、雅号を「放菴（放庵）」と改めたあと、「放菴紙」と名付けられた特製の麻紙に巧妙な筆致を生かした戦後の日本画まで、さまざまな作品を所蔵していますが、これらの作品を順次、展覧会で御紹介しながら、多彩な才能を示した画人・小杉放菴の生涯にわたる画風の変遷を辿り、その全貌に迫るため、質・量とも、さらなるコレクションの充実に努めています。

　なお、今回の展覧会では、このコレクションから選りすぐった名品の一つとして、滋賀県の安土にある、織田信長に所縁の寺院・摠見寺から寄託を受けた襖絵《石上》を、５年ぶりに公開いたします。