東海、関東、東北の各地にある、個人作家の名前を冠した公立美術館が協働し、各館の所蔵作品と現代美術の作家の作品とを対峙させるかたちで展示する、新しいコンセプトの展覧会を企画いたしました。

　碧南市、花巻市、日光市という、各地方の公共団体により設立され、日本の近代美術の歴史の上で、ほぼ同時代に活躍していた、小杉放菴、藤井達吉、萬鉄五郎の名前を冠した美術館が、それぞれの所蔵作品のなかから厳選した作品を一堂に集め、現代美術の作家である鉄の造形作家・多和英子氏の作品とともに各会場を巡回して展示します。

　これまで、それぞれの出身地にある各美術館では、郷土の出身作家を顕彰し、紹介するかたちでの展示を数多く行なってきましたが、今回、同じ時代を生き、少なからず交流も持っていた三人の作家の作品と合わせ、さらに、先鋭的な造形感覚で現代に活躍している作家の作品とも対比的に配置・構成することで、地域に根差しながらも空間性と時代性を超越した美術作品というものの本質が、より一層、顕わになるのではないでしょうか。

　そして、もはや歴史的な評価が定まったといえる３人の作家と、創作活動を続けている現代の作家の、それぞれの作品が、互いに補助線としての役割を果たして響き合い、そこから、個々の作家とその作品について、新たな視点からの理解が深まることを期待しています。