このたび、小杉放菴記念日光美術館では、2007年度に開催した「出会いの美術」展に続く、美術鑑賞教育をテーマとした展覧会として、「出会いの美術Ⅱ 絵画を楽しむエトセトラ」展を開催いたします。

　この「出会いの美術」シリーズは、当館が1997（平成９）年に開館してより、10年を超える歩みの中で、多くの方々から耳にしてきた「絵の良さが分からない」「絵の見方が分からない」といった声を真摯に受けとめ、より分かりやすい鑑賞の機会を設けることができれば、という思いによって生まれた企画であり、来館者の方が絵画を鑑賞する楽しさを実感し、自らの嗜好にあった作品と出会える機会の提供を目的としています。

　これは、さまざまな種類の優れた美術作品を数多く見る体験を積んでいくことが、絵画鑑賞の出発点であり、鑑賞教育を行なう上で欠かすことのできない前提であるとの考えに基づき、所蔵作品の中から、幾人もの作家による、多様な技法を用いた表現を選び出し、一堂に御紹介します。

　そこで展示されるのは、日本画・油彩画・水彩画・版画・素描といった素材や技法の異なる作品であったり、具象や抽象といった表現方法のちがう作品であったりします。そして、この環境の中で来館者が作品と真剣に対峙し、まずは、自分の興味や関心が向く対象と出会うことから絵画鑑賞の楽しさを知り、深めていくことができるように、展示方法や補助資料にも工夫を凝らします。

　また、小学校の図画工作科や中学校の美術科の『学習指導要領』でも、「鑑賞」という項目が重要視されるようになってきた現在の状況において、栃木県内でも、よりよい美術鑑賞教育の実現を目指して様々な取り組みがなされています。特に、県内の美術鑑賞教育に携わる人びとが中心となり、2005年８月に設立された「美術鑑賞教育ネットワークとちぎ（通称あーとネット・とちぎ）」では、熱意ある活動が続けられ、その内容は、あーとネット・とちぎのホームページ上で、広く公開されています。

　今回の展覧会では、この「あーとネット・とちぎ」の活動をはじめ、県内の各機関で行われている美術鑑賞教育活動についても併せて御紹介したいと考えています。